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あの夜。 ワルドから、あの少年が伝説に語られしガンダールヴであることを告げられた。 そして、彼が言うには、いつの日か私は歴史に名を残すような偉大なメイジになるそうだ。 馬鹿馬鹿しい御伽噺にしか聞こえなかった。自分の身の程は、自分が一番良く知っている。あの少年の馬鹿さ加減も良く知っている。 私達が伝説の生まれ変わりを演じられる理由など、どこを探しても見つかりはしない。 私がメイジとして大成することはないだろう。 人並みに扱えるようになれれば、それで十分だ。 そう言えば、そんな風に思えるようになったのは、いつの日からだろう。 考え込む私に向かって、彼は求婚した。 ふと、あの少年の笑顔が頭に浮かぶ。 目の前にいるこの男と結婚しても、私はあの少年を使い魔としてそばに置いておくのだろうか。 なぜか、それはできないような気がした。これが鴉や、梟だったら、こんなに悩まずにすんだのかもしれない。 もし、私があの少年を見放したら、あの子はどうなるんだろう。 キュルケか、それとも少年に施しを与えるシエスタとか……、誰かが世話を焼くに違いない。 そんなの嫌だ。 あの少年は、馬鹿で間抜けだけれど、他の誰のものでもない。 私の使い魔なのだ。 彼の笑顔も、彼の涙も、彼の優しさも、彼の心も、彼の体も、全て私のもの。 彼は私の使い魔なのだから、彼の全ては私のもの。 私はプロポーズの答えを保留した。 この男は、優しくて、凛々しくて、ずっと憧れていた。 求婚されて、嬉しくないわけじゃない。 でも、あの少年が心に引っかかる。 引っかかったそれが、私の心を前に歩かせないのだ……。
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魔法学校学院長室、ドッピオは決闘をしてからたまにここに来たりします 点前では使い魔の中で不思議な力を使うという噂が広まり学院長自らが調べるためと言うものですが ドッピオと学院長オスマン自身はここにとっての異世界、地球の話をしていることが多いのです 最初にドッピオの不思議な力、スタンドについても 「まあわしらには見えんし悪用さえしなければの。ただしまた決闘があるなら直接、貴族をそれで殴るのは勘弁しとくれ」 などといってお仕舞いでした 今日もまた異世界についての話をしていますが主だった事が話しきったので会話は弾みません 「おお、そうじゃ。お主の世界の人間がおったかもしれん」 会話を弾ませようとオスマン氏がとても重要なことをさらっと言いました 「そうですか・・・って、ええ?!」 さらっと言われたもので聞き逃しそうになりましたがそんな重要なことは聞き逃せません 「どこだかは知らんが「元の世界に帰りたい」と言ってた者がおったんじゃよ。おそらくお主と同じ世界だとは思うのじゃが」 「その人は今どこに?」 「死んだよ・・・。わしを助けた時には酷いケガでの、死ぬ間際まで元の世界に帰りたいとうわごとのように繰り返しておった・・・」 「助けた?」 「・・・ちいっとばかし爺の昔話に付き合ってくれるか?」 「もう30年も前の話なのかのう・・・ ある日わしは森にとある秘薬の材料を探しに行っていたんじゃよ しかし途中ワイバーンに襲われたんじゃ 死にそうだったところにその者が一撃でワイバーンを粉砕して助かったんじゃが」 「・・・・・・・」 「そのときにワイバーンを倒した一撃の反動が決定打になったのかその後は先に言ったとおりじゃ」 「すいません。いやな思い出を話させてしまって」 「なに言っとるんじゃ。爺に遠慮は不必要じゃよ」 そう言ってオスマンは紅茶を手に取った。話の最中にミス・ロングビルがおいてくれたものだ ドッピオも紅茶を口につけて話の一区切りを入れていた 「いただきます」 紅茶に口を付け一口飲むとドッピオは考えを巡らせ質問します 「なにか遺品とか残ってないんですか?」 「うむ、「破壊の杖」と言う彼の所持品だったものがある…」 ガシャン・・・ 破壊音はミス・ロングビルのポットを落とした音でした 「し、失礼しました。すぐに掃除を」 動揺しているのかその動きには落ち着きが無かった 「彼がわしを助ける時に使った魔法の杖らしきものなんじゃが・・・ 余りの破壊力の為この学院長室の下にある宝物庫にしまってあるのじゃよ」 「見れませんか?」 「鍵なくしちゃって・・・ゴメンネ!!」 手を合わせ片目を瞑る500歳にカップを投げたくなる衝動を押さえるドッピオでした 「魔法で何とかならないんですか?」 「スクエアクラスのメイジ数人は欲しいからのぉ・・・だがもしかしたら・・・」 「何か名案があるんですか?」 「壁をぶち抜けばいけるかも?」 「やっていいならやりますけど・・・」 キング・クリムゾンのパワーなら可能と考えたドッピオの考えは 「絶対ダメ!!」 両腕でバッテンを作った爺にさえぎられてしまうのでした 「なら、言わないでくださいよ。でもまあ、魔法が使える杖なんか僕の世界には存在しないから関係ないですね」 そう言いドッピオは紅茶を飲み干します。出された以上余す訳にはいきません 「お世話になりました。また来る時は有力な情報をお願いします」 「まぁそう焦るな若いの。また来い」 「仲が宜しいのですね」 ニッコリ微笑みながらオスマンに紅茶のお代わりを注ぐロングビル 「ほっほっ、なかなかおもしろいやつでのぉ。あいつと話していると若い頃を思い出すわい」 長い髭を触りながら楽しそうに話すオスマン 「それは良いことですね、オールド・オスマン。しかし人のお尻を触りながら言っても格好良さは三十分の一ですよ」 「痛て!!」 秘書にセクハラを軽くあしらわれているオスマンには学院長としての威厳もクソもありませんでした 9へ
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……ハイジョン、これは犬ですか? いいえ、これは眼鏡です。 わたしの中のジョンも眼鏡だと言っていた。 わたしも眼鏡だと思う。それ以外の何にも見えないし。 そう、眼鏡。見るからに眼鏡。誰が見ても眼鏡。眼鏡祭りだ。 わっしょい、わっしょい。あはは、うひひ。わっしょい、わっしょい。 ……ちょっと落ち着こう。冷静になろう。とりあえず手に取ってみよう。 ほうほうほほう。こりゃ立派なもんね。レンズの輝きなんて、磨き上げられた宝玉も真っ青。 パッドの可動域はかなり広めに作られてる。 蝶番も九十度以上は余裕だから、小さい人も大きい人もオッケーってわけか。 しっかしこれどういう技術使えばできるんだろう。かなりの熟練職人が練成したんだろうな。 この軽さ。かといって頑丈さを犠牲にしてるわけじゃない。 本来なら両立できないはず二つの柱がでんとそびえているわけよ。すごいね。 無理に両立してるわけじゃなくて、ごく自然にそう作られている。 この屋根を支えるにはこの太さの柱が必要ってな感じで。 そして色。この色。草原の緑と素晴らしいコントラストを描く赤。 使いようによってはかなり下品になっちゃう色なんだけど、これは違う。 炎の赤? 血の赤? 夕陽の赤? 唇の赤? 髪の赤? どれも違う。 フレームに使われた赤は、わたしが見たことのない赤だ。 地面に置かれていたせいで少し土がついていた。息を吐きかけ、ハンカチで拭く。 ああ、きれい。これはきれい。日用品じゃなくて芸術品。見てるだけでうっとりしちゃう。 でもね。 「ミスタ・コルベール」 「なんだね。ミス・ヴァリエール」 「もう一回召喚させてください」 「それはダメだ。ミス・ヴァリエール」 「眼鏡は使い魔になりません」 「これは伝統なんだ。ミス・ヴァリエール。例外は認められない」 いやいやいやいや。いくらなんでも眼鏡は無いって。 「彼は……」 口に出してからおかしいことを言ったと気づいたんだろうね。 眼鏡に彼も彼女もないって。 「コホン。その眼鏡は……」 あ、ごまかした。 「ただの眼鏡かもしれないが、呼び出された以上、君の『使い魔』にならなければならない。古今東西、眼鏡を使い魔にした例はないが、春の使い魔召喚の儀式のルールはあらゆるルールに優先する。彼には君の使い魔になってもらわなくてはな」 あ、また彼って言った。 「嫌です。伝統がどうこういったってわたしは嫌です」 「だからね」 「わたしは眼鏡なんて嫌です」 「はい」 「なんだね、ミス・タバサ」 「私は眼鏡が好きです」 「君ちょっと黙っててくれないか。頼むから。……ミス・ヴァリエール。眼鏡をそう毛嫌いするもんじゃない」 毛嫌いはしてないけどね。でもねぇ。 「おいおいゼロのルイズが眼鏡召喚したぜ!」 「すごいな、俺たちにゃ到底真似できないぞ!」 ここでどかんと笑いが起きた。 あーあ、自分のことでなけりゃわたしだって笑いたいよ。 でも自分のキャラってもんがあるし、とりあえずマリコルヌ睨んどこう。 「ミスタ・コルベール。やっぱり眼鏡は使い魔になりません。眼鏡は物じゃないですか」 「いやしかし。物といえば、ゴーレムだって物なわけじゃないかね」 なるほど、一理ある。あってもやだけど。 まずいな、このまま言い負かされちゃうと本当に眼鏡使い魔にするはめになる。 そんなことになったら……そんなことになったら……まずい、まずい。まずいって。 「眼鏡はゴーレムじゃありません」 「しかしだね……」 「私は眼鏡なんか嫌です」 「私は眼鏡が好きです」 「ミス・タバサ、少しでいいから黙っていてくれ」
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レコン・キスタ。 アルビオン王国を中心に起こっている宮廷革命運動の中心組織。 そのアジトの一室に一人の男がいた。 名前はジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。 これはアルビオン王国が滅んだ戦いでの、彼の行動の記録である。 「入るよ」 ノックの音と共にフーケが入ってきた。 ワルドは振り向くことなく話す。 「何の用だ?」 「そろそろ出撃だから呼んで来いってさ。まったく、何で私が使い走りなんて…」 フーケが文句を言うがワルドは無視して作業を続ける。 「何をやってるんだい?」 「…仮面を作っているんだ」 「もう持ってるだろう?」 「いや、本体が付けるヤツだ。目印になる物が有った方がやりやすい、と言われてな」 今回のワルドの任務は戦闘ではない、手紙の奪取だ。 故に偏在を戦闘する者と奪取するに分け、味方への目印にする。 その際に戦闘する者の仮面を着けている場合は援護攻撃に、 奪取する者の仮面を着けている場合は防御に、 そのように分けた方がやりやすいのではないか、という意見が出たのだ。分かりやすく言うとサッカーでキーパーだけユニフォームの色が違うのと同じような理由だ。 あまり意味が無さそうだとは思ったが『あまり手間ではなさそうなのでとりあえずやっておいてくれ』と上官に言われてはやるしかない。 だが一つ問題が発生した。 最初は渋々と作っていたのだが、だんだんワルドはそれが楽しいと思ってきた。 よって机の上には15種類の仮面が並んでいた。 「どれが良いと思う?」 「私に聞くな」 制作No.07 正方形の下に逆三角形を付けた様な形の白い仮面。 目の所は大きな黒い丸で、口は赤い色で形は上が無い半円形。 結局ワルドはこの仮面を選んだ。 「決め台詞も考えてある」 「それはいいから早く行きな」 しかしワルドは仮面を着け、ポーズをとった。どうあっても決め台詞を見せたいらしい。 「いろどりましょう食卓を みんなで防ごうつまみ食い 常温保存で愛を包み込む カレーなるレターハンター 快盗ワルドただいま参上!!」 「はいはい、凄いね」 フーケはもうコメントする気もないらしい。 「だろ?だろ?」 さっさと行けよ。 そして目的の城が見える場所まで移動する。敵はパーティー中らしい、奇襲には好都合だ。 「ユビキタス・デル・ウィンデ……」 偏在の魔法を唱える。この魔法は唱えたものの分身を作り出す魔法だ。 ワルドが作れるのは最大で四人。自分を合わせて五人で戦うのが普段の使い方だが今回は違う。 分身四人を囮にして、その隙に本体が手紙を盗んでくる作戦だ。 敵の真ん中に突っ込むのに本体も行っては危険だ。だから分身で騒ぎを起こし、混乱させる。 盗みに行くのはワルドでなくても良いのだがワルドなら分身の状態を把握できる為、逃げやすい。 分身四体が仮面を付け、突入した。 分身を突撃させ、ころあいを見計らって本体はルイズの部屋にフライで回りこみ潜入する。 「ふっふ~ん。潜入完了♪」 鼻歌を歌いながらルイズの部屋に入っていた。 「まずは鞄からだな」 鞄を漁る。そして封筒を見つけた。 「これだな。アルビオンの封筒だし間違いない!」 意気揚々と手紙を懐にしまい、再び漁り始めた。 「他には何かないかな~♪むむっ!これは!」 何か見つけたのか? 「ルイズのパンツだ!ラッキー!」 ラッキー、じゃねえだろ! 「これを好きにしていいんだよな?俺ロリコンだし問題ないよな?」 認めた。ロリコンって自分で認めたよコイツ。 「被ったり、舐めたり、何をしても良いんだよな!?」 そのまま何をしようかしばらく考えるロリコン仮面。 だがしかし…ロリコンは偏在の全滅を感じた。 「うん?偏在が全滅したか、仕方ない名残惜しいが引き上げよう」 窓から帰っていくロリコン。 イギーが来た時、そこは『かなり無残に』荒らされていた。 フライで飛びながらロリコンは考える。 「うーん。やっぱりパンツは持ってきた方が良かったかな?」 何を考えているんだお前は。 「やっぱり取りに行こう!」 そしてUターン。 だが城は火に包まれていた。 「あれ?城が燃えてる?」 燃えてるね。 「パンツも燃えちゃう!」 そういって全速力で城に戻るロリコン。 そして城の屋根に着地し、ルイズの部屋の場所を思い出す。 「えーと、えーと、どこだっけ?」 迷い続けてやっと思い出した時、 城で爆発が起きた。 「うわわわわわわわわ!」 爆発に巻き込まれはしなかったが、今の爆発で火の手が強くなり、このまま取りにいったら命が危ない。 彼は命かパンツかの二択に迫られた。 「パンツに決まってる!とう!」 華麗にルイズの部屋に飛び込む。 だがそこには何も無かった。 「部屋を間違えたか…」 だな。 そして出ようとして足を滑らせ、ころんで頭を打って気絶した。 次に目が覚めたときはベッドの上だった。 「おお、ワルド子爵。目が覚めたかね」 声をかけてきたのはレコン・キスタの総司令官クロムウェルだった。 「ここは…?」 「我々のアジトだ。だが安心したまえ、戦いには勝った」 「そうでしたか…」 どうやらあの後死なずに済み、仲間によって運ばれたらしい。 「して…目的の手紙は?」 ロリコンは懐から封筒を出し、クロムウェルに手渡す。 クロムウェルは封筒を開け、中の物を読み始めた。 だが、その表情が次第に曇っていき、一応最後まで読んだ後にロリコンに声をかけた。 「これは、目的の手紙ではないようだが?」 「え?うそ?」 敬語を使えよ。 ロリコンも封筒の中身を読む。 だがそれはアンリエッタがウェールズにあてた手紙ではなく、アルビオンにあるレストランの食事券だった。 「…今度食べに行きます?」 「あ、良いね、行こう」
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autolink MB/S10-102 カード名:使い魔 レン カテゴリ:キャラクター 色:黄 レベル:1 コスト:1 トリガー:0 パワー:6000 ソウル:1 特徴:《使い魔》?・《動物》? 【自】このカードが手札から舞台に置かれた時、そのターン中、このカードのソウルを+1。 ……危ないのは、志貴の方 レアリティ:TD illust. ▼修正内容 サイン箔を本来のデザインに修正致しました。 ▼修正理由 サイン箔の一部が本体の位置からずれていたため、修正致しました。 ▼カード交換に関して 交換対応を実施させていただきます。 ■このエラッタカードに関しては、ゲーム進行上重度の問題が発生するため、 交換対応を実施させていただきます。 10/10/18 今日のカード。運がよいとサイン入り。 登場したターンに限りソウルが2となるアタッカー。 トリガーなしの代価として得たパワー1000がまるまるなくなっているが、序盤から高ソウルで攻めることができる「これぞ黄」と言わんばかりのキャラ。 特徴も、ゼロの使い魔やなのはシリーズにシナジーの多い《使い魔》?、全般的にサポートの多い《動物》?と便利な2つ。 《動物》?デッキやソウルビート、フェイトデッキに入れてみても面白いかもしれない。
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─ミシガン湖畔─ その夜、彼はいつものように見張りをしていた。 自分達の愛馬が猛獣に襲われないように。 なによりも国王のために走る自分の命を狙うテロリストと、友人がこのレースで手に入れた聖人の遺体(といっても今は脊椎の一部しかないが)を狙う者たちから身を守るためである。 ふわっ、と欠伸を一つ、そろそろ見張りを交代してもらおうと隣を見て彼は───目を疑った。 「…ジョニィ?」 周囲を『鉄球の回転の振動波』で警戒していたにも関わらず、友人は馬ごと消えていたのである。 「…?」 目を開くと抜けるような青空が広がっていた。ああ、今は昼なんだなと思う。 ───まずい、寝すぎたか。 そう思って勢いよく体を起こす。 「すまないジャイロ。ちょっと寝過ごしたみたいだ…」 僕は立つことは出来ないから上半身を捻って周りを見回した。 だが ―――おいおいおいおい、ずいぶん呑気だなオタクさんはよ? そう言いながらニョホホと笑う相棒はそこにはいなかった。 「あんた誰?」 僕の名前は『ジョニィ・ジョースター』 この「物語」は僕が歩き出す物語だ。 最初から最後まで本当にツンデレな少女 「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」と出会った事で… ─歩き出す使い魔─ 「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出してどうするのよ?」 「さすがゼロのルイズ!平民を召喚しやがった!」 「どんな魔法を使おうがやっぱゼロは無駄無駄ァ!」 「マギィ…」 「ちょっと間違っただけよ!ミスタ・コルベール!もう一度やらせてください!」 気が付くとジョニィは騒がしい人々の輪の中心にいた。 空は抜けるような青、周りは見渡すばかりの豊かな草原を バックに目の前には桃色の髪の少女が立っている。 ───草原だって? 「草原!?ここどこッ!?」 ふいに自分のいる場所を認識して軽くパニックに陥る。 そう、彼は昨日まで雪の残るミシガン湖畔にいたはずだ───が周りには見事な緑の草原が広がっていた。 まったく状況が理解できない彼に目の前にいた少女が苛立たしそうな声を上げて詰め寄ってくる。 「ちょっとあんた!どこの平民よ!」 「へ、平民?」 「まったく!なんで私の使い魔がこんな平民なのよ!」 ゼロのルイズと呼ばれた少女(彼女の名前だろうか)は中年のハゲ男性になにやら必死に頼んでいるが男性は首を横に振るばかりである。 (な、なんだこいつら?大統領の刺客がもう来たのか…?だがなぜ攻撃してこない?) スタンド攻撃を警戒しつつ周囲を見回すと遠くには大きな石造りの城が見える。 自分を取り囲む集団は彼女と同じような服装をして手に杖のような物を持っているのも確認できた。 (ここは明らかにミシガン湖畔じゃない…そして僕の周りにいるやつら…同じような格好をしている?組織か…何かチームのようなものだろうか?) ふいにジョニィの背中を何者かがつついた。 驚いて振り返るとそこには過酷なレースを一緒に旅してきた愛馬『スローダンサー』の姿があった。 「僕の馬!?よかった、君も一緒にきていたのか!」 よく見ると近くに車椅子や荷物も落ちている。昨晩、自分の周囲にあったものがここに移動してきたようである。 (これは…モニュメントバレーの近くで攻撃してきたスタンド使いの攻撃に似ている) (ブンブーン一家や『11人』のスタンド使いもチームで一つの能力を持っていた…まさかあいつも他に仲間がッ!?) しばらくすると中年男性と話が終わったのか、少女がガックリとうなだれて近づいてくる。 馬に乗って逃げようかとも思ったがまずはここがどこか解らなければジャイロと合流することもできない。 もちろん危険と判断すればすぐに自身のスタンド『タスク』を発現させて撃とうと思ってはいたが両手の爪の数である10発しか撃てないタスクではこの人数だと圧倒的に不利である。 とりあえず警戒しつつも目の前の少女から情報を得るべきだろう、ジョニィはそう考えた。 「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」 「君は一体何者だ?目的は『遺体』か…?」 「いいからじっとしてなさい」 ジョニィを軽く無視すると少女は杖を振り、呪文のようなものを唱え始める。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 下半身を動かすことが出来ないジョニィはルイズの次の行動に逃げることも抵抗することもできなかった。 「え?」 「ん……」 重ねられる唇と唇。 ───あなたならどうする?最高だった…… 「ってそうじゃないッ!おまえ何やってるんだーーッ!?キスはともかく理由を言えーーーッ!!!」 「いきなり大声ださないでよ!『コントラクト・サーヴァント』の儀式よ」 「な、なに言って…」 そう言いかけたところで体にサンドマンのスタンド攻撃を喰らったときのような熱と痛みが走った。 あのとき体感した、まるで『燃える音』が血管の中を駆け巡り全身に運ばれるような感覚にジョニィは思わず声を上げてしまう。 「うおあああああああああ!?」 (やっぱりこいつ…スタンド使い!?) 「使い魔のルーンを刻んでるだけよ。すぐ終わるわ」 あまりの痛みと熱に『タスク』を出すこともできずにジョニィは転げまわる。 しばらくするとルイズの言葉どおり何事もなかったかのように熱と痛みは収まったが代わりに左手の甲に謎の文字が出現していた。 以前、左腕にラテン語が刻まれたことがあったが今、手の甲に現れた文字は自分の知る言語でも次の遺体の場所を示す物でもない。 「ふむ、珍しいルーンだな」 いつの間にか近づいてきていた中年男性がジョニィの左手の文字を見るとそう言ったが何の事なのか理解できずただ成り行きを見守ることしか出来ない。 「さてと、じゃあ皆教室に戻るぞ」 彼はそのままきびすを返すと何事でもないように───宙に浮いた。 そういえばルーシーを追ってきたスタンド使いも宙に浮いてたが、あれは雨粒に乗っていただけだ。 しかし目の前の男は何も無い場所で浮いたのである。 呆然とするジョニィの前で今まで自分を取り囲んでいた連中も次々と宙に浮いていく。 「ルイズ、お前は歩いてこいよ!」 「あいつ『フライ』はおろか、『レビテーション』さえまともにできないんだぜ」 ───ここは何なんだ、ジャイロはどこに行ったんだ… 目の前の光景が信じられず自分の頬を抓るジョニィに、ルイズはため息をついてから怒鳴った。 「あんた誰よ!ほんとどこの平民よ!」 ───これは夢だ、早く起きてジャイロと見張りを交代しないと。そう思いながら彼は答えるのだった。 「僕の名前は…ジョニィ。ジョニィ・ジョースター」 To Be Continued=>
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魔法学院の朝① 窓から差し込む日の光で間田は目を覚ました。 固い床に寝転がっていたせいで体中が痛む。ストレッチでもして体をほぐそうかと思っていると、右手に何かを握り締めていることに気付 く。 それは、昨日ルイズに洗濯しておいてと投げつけられたシルクのパンツだった。 昨日はこれのおかげで固い寝床でもなんとか寝ることができた。パンツに感謝しつつ、間田は他の洗濯物をかき集め、外に出―――ようと したところで、どこで洗濯すればいいのか、いや、そもそもどうやって洗うのかわからないことに気がついた。 昨夜、ルイズを質問攻めにした際に返ってきた答えを聞いた限りでは、この世界には機械なんてものは存在せず、医療や土木といったあら ゆる分野で魔法の力を利用しているのだという。洗濯機なんて便利なものはなさそうだった。 となると、やっぱり洗濯板かなんかでゴシゴシこするしかないだろう。 力仕事が苦手な間田は、想像しただけで気が滅入った。 「魔法って便利なモンがあるんなら、わざわざ俺に洗濯させなくてもいいんじゃねーかなぁ・・・?」 そう呟いて、枕に顔をうずめているルイズを見やる。 よく考えれば、こいつらメイジは様々な分野に応用できる魔法の力を使えるというではないか。なぜ魔法も使えない(間田はスタンドが使 えるが)平民にわざわざ洗濯なんかさせるのだろう。 魔法なら腕力に頼る必要もないだろうし、ずっと効率もいいはず・・・。 まあ、考えていても始まらない。 とりあえず洗濯場の場所を突き止めて、洗濯物を片付けよう。 ルイズを起こすとうるさそうだったので、サーフィスでルイズをコピーし、そのコピーから洗濯場の場所を聞き出すことにした。 そーっと、細心の注意を払いながら、ベースの人形の手の先をちょん、とルイズの頬に触れさせる。 サーフィスは粘土細工のように形を変え、ネグリジェ姿のルイズへと変身した。 「朝から何なのよ? まさかまた変な真似する気じゃないでしょうね?」 コピールイズは不機嫌そうに言う。 「うるせぇぞサーフィスッ! とっとと洗濯場に案内しろや」 「何よその口の利き方は。 ご主人様に対してそんな口利いていいと思ってるの?」 「クキィーッ! な、ナメやがってえ!」 サーフィスはコピーした人間の性格がそのまま反映される。今までコピーした中には命令を聞かなかったり反抗するヤツもいたが、ルイズ のコピーはズバ抜けて言うことを聞かない。 口で命令するのは諦め、スタンドを『操作』し、無理やり案内させることにした。 クローゼットからルイズの制服を拝借し、サーフィスに着せると、一人と一体は部屋を出た。 サーフィスの案内のおかげで、洗濯場はすぐに見つかった。 間田は最後まで(魔法の力で動く洗濯機みたいなのがあればいいなー)とか淡い期待を抱いていたが、井戸の傍にタライと洗濯板がぽつん と置いてあるのを見てげんなりしている。 ため息をついて、タライに水を入れようとロープを引っ張っていると、後ろから足音が聞こえた。 「おはようございます、ミス・ヴァリエール」 「ん、おはよう」 女の子の声だ。コピーを本物のルイズと勘違いしたらしい。 額のネジに気づかれないようにしろよ、とサーフィスにこっそり命令しようとちらりと振り向いた刹那、固まった。 そこには。 『ある嗜好』を持つ者たちの憧れの存在がいた。 ヘッドドレス。黒い服。フリルがついた純白のエプロン。 そいつの名は。 『 メ イ ド 』 ッ ! ! 「(う、うおおおおおおぉぉぉッ!? マジか! マジでかァーッ!!)」 自他共に認めるオタク、間田。『ある嗜好』すなわち、彼はメイド萌えな男だったのである! 初めて見る本物のメイドに、彼はヤバイくらい興奮していた。 「(すげぇ・・・コスプレなんぞとは訳が違う! 本物は『良い』ッ!! なんて清楚なんだッ!)」 黒髪に東洋人的な顔立ちも間田の興奮を上昇させるのに一役買っていた。要するに、彼女は間田のタイプだったのである。 「あの・・・・ミス・ヴァリエール? あちらの方は一体・・・?」 血走った目で自分を見つめる陰気な男を見て、若干おびえた表情をサーフィスに向けるメイドさん。 サーフィスは「やれやれだわ」と呟き、間田を彼女―――シエスタに紹介する。 「あいつは私の使い魔のトシカズ。たまにああなるけど、悪い奴じゃないわ」 「は、はぁ・・・」 何事かブツブツ呟きながらギラついた目でこちらを見ている間田は、悪い奴どころかアブナイ奴なのだが、貴族の言うことなのでシエスタ は信じることにしたらしく、間田に近づいていくとペコリとお辞儀をし、自己紹介をした。 「初めましてトシカズさん。私、シエスタと申します」 「ど、どーも! 間田敏和ッス!」 子供のようなニコニコ顔で元気良く名を名乗る間田に、シエスタはクスッと笑う。 つい先ほどまでは明らかにヤバそうな奴に見えたのだが、意外とまともそうだ。 それから二人は、それぞれが持ち寄った衣服を洗濯した。 洗濯板を使って衣服を洗うのは間田にとって初めての経験だったので、シエスタに教えてもらいながら洗った。 その間、間田はずーっとシエスタを鼻の下を伸ばして見ていた。 全ての洗濯物を洗い終えると、間田が持ってきた分も干しておくと言い、シエスタは去っていく。 その後姿を、間田は涙ぐみながら見つめる。 「か・・・感動だッ! やっぱり本物のメイドさんは優しい上に気が利く!」 もうトリステインに永住しちゃおっかなぁ、と早くも故郷を捨てる気になっている間田の頭を、後ろにいたサーフィスが小突く。 「あんた、メイドごときに良くそこまで感動できるわね」 「だってメイドだぜメイド! 日本なんかにゃ一人としていねーんだぜ!? あ、待てよ。メイドさんて他にもいる?」 「まあ、あの子がいるんなら他にもいるでしょうね」 「・・・・う、うおぉおおぉ! 今日は人生最良の日だァーッ!!」 雄叫びをあげる間田に、サーフィスはもう何も言うまいと、寮へ向けて歩き出した。 「ほら、置いてくわよ!」 「おーう! 今行く!」 スキップしそうなほどルンルン気分の間田を見て、サーフィスは深いため息をついたのだった。 ルイズの部屋につくと、本物のルイズはまだ気持ちよさそうに眠っていた。 コピーに着せていた制服をクローゼットにしまったところで、サーフィスが口を開いた。 「この時間になったら起こしてくれる? そうしないと朝食に間に合わなくなるから」 「わかったよ。そんじゃ、戻れサーフィス」 コピーは瞬く間に元の木の人形へと戻り、力なく床に倒れる。 人形の関節を折りたたみ、ナップザックへ押し込むと、間田はルイズを起こしにかかった。 「おーい、起きろー」 「・・・・うー・・・・」 肩を揺する。起きない。 「ルイズ、早く起きないと遅刻するわよ!(裏声)」 「・・・・むー・・・・」 頬をつつく。そっぽを向かれた。 この女、幸せそーに寝やがって。今さらながら、自分を差し置いて暖かいベッドで寝るルイズにムカついてきた。 自分は固い床に寝転がるしかないというのに。 「早く起きろコラァー!」 なんとなく腹が立ってきた間田はルイズの毛布を引っぺがし、どさくさ紛れにルイズの頬をつねる。 ルイズは夢でも見ていたのか、何か叫びながら飛び起きた。 「いいい、いだいいだい! ごめんなさいお姉さま! ごめんなさ・・・アレ?」 「おはよーございます、お嬢様ーッ」 「・・・あ、あんた誰よ!?」 「マジで頭がカワイソーなことになってんのか? 間田敏和だ」 「へ・・・あ、ああ、使い魔ね。そっか、昨日召喚したんだっけ」 ルイズはひとつ欠伸をすると、ベッドに腰掛ける。 「服ー」 「ほい」 ダルそうに命令するルイズ。眠そうな目をこすりつつ足をブラブラさせる姿はなんとも可愛らしい。 思わず間田は微笑んでしまう。世話の焼ける妹ができたようなものだと思えば、この命令口調も気にはならない。 服を渡すと、今度は下着を取るように言われる。 ネグリジェを脱ぎ始めたルイズを見ないようにしながら、クローゼットの一番下をあさる。 「・・・チッ、ハデなのはねーなぁ」 「何か言った?」 「いや、何も。ほい」 後ろを見ずにパンツを投げる。あとはルイズが着替え終わるまで彼女に背を向けていればいい。 しかし、女の子が自分の真後ろで着替えているというのは・・・何というか、その・・・フフ・・・・。 間田が『チラッと見るだけならバレないかなぁ~』とか邪な思考を巡らせていると、ルイズが再び声をかけてきた。 「服ー」 「・・・あ? 今渡しただろ」 「着せて」 時間が止まった。間田の周囲だけ。 「ごめん、もっかい言って」 「だから、服。着せて」 「おま、なっ、何言ってんの! 自分で着ればいいじゃねーか!」 「平民のあんたは知らないだろうけど、貴族は部屋に下僕がいるときは自分で着替えたりしないのよ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 振り向くと、下着姿のルイズが早くしろよとばかりに間田をねめつけていた。 「(い・・・いいのか!? 本当にいいのか、俺ッ! こんな展開マンガでしか見たことがねえぞ・・・!)」 心臓は早鐘を打つように激しく鼓動し、額には脂汗。 順子やアニメキャラなどで似たような妄想は腐るほどしてきたはずの間田だったが、それを本当に実行するとなるとさすがに尻込みしてし まう。 「ほら、早く! 朝食に間に合わなくなるでしょ!」 「は、はいィ~ッ! ただいま~!!」 間田はルイズに怒鳴りつけられ、慌ててブラウスを手に取るとルイズの元へ近づき―――そして落胆した。 何せルイズの体は凹凸というものがなかったのである。 見事なまでの幼児体系に、間田は先ほどまでテンパッていた自分を情けなく思った。 「(うん、俺はペッタンコには興味ねえんだ)」 ルイズに服を着せ終わり、外へ出ようとするルイズだが、ドアノブに手をかけようとしたとき、間田が何かを肩に背負っているのが目に入 った。 見れば、それは昨夜の木の人形が入った荷物である。 ルイズは当然のごとく顔をしかめ、荷物を指さす。 「・・・・あんた、それ持ってくの」 「え? ダメ?」 「いや・・・まあ、いいけどね」 ルイズは気味悪げに間田と荷物を見やり、再びドアに向かう。 ドアを開き、外に出ると同時に隣の部屋のドアが開き、中から褐色の肌と燃えるような赤毛を持つ美女が出てきた。 ルイズとは正反対とも言えるほどのナイスバディである。 「あら、おはようルイズ」 「・・・・おはよう、キュルケ」 キュルケと呼ばれた赤毛の美女はニヤリとした笑みを浮かべ、反対にルイズは露骨に嫌そうな顔をする。 ―――そして、我らが間田はというと。 「(す、すっげぇ・・・。おっぱいがルイズの頭蓋と同じくらいの大きさじゃねえか・・・)」 マンガでしか見たことのない爆乳に、再び感動を露にしているのだった。 .....To Be Continued →
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男の小屋。 外から大きな足音が聞こえる。 タバサが外のゴーレムを見つけ、全員小屋から出て、臨戦体制に入る。 男はいきり立つ。 「あれがフーケとやらかッ!あのような木偶人形我が重機関砲で穴だらけにしてみせるわァアアアッ!」 「やめた方がいい、弾の無駄」 「ゴーレムに多少穴開けたところで数秒で元通りよ」 二人が止める。 「シルフィードなら待機させてる、私が本体を狙う」 「上空からタバサが魔法で本体を狙うから、私と貴方とミス・ロングビルでゴーレムの動きを止めるわよ」 口笛を鳴らすと上空から風竜が飛んでくる。それにタバサは杖を持って飛び乗り、ゴーレムの斜め下の森を旋回し始める。 「くらえッ!重機関砲ゥウウウウッ!スカッとするぜーッ!!」 キュルケはルーンを唱え、炎を飛ばす。 魔法と弾丸がゴーレムの脚部を襲う。 穴が空き、修復のために動きが止まる。 そこを森から急上昇したシルフィードとタバサ。 タバサ得意の氷の矢が正確にフーケに突き刺さる。 「やったわ!」 しかし、そのフーケの影は土となり、崩れる。 シルフィードの真下から石礫が飛来し、直撃する。 「きゅいきゅいーーッ!」 数キロ離れた地点に滑空しながら落ちていく。 「つ、土人形!?どういうこと、あんな精巧に動きまでする人形はスクウェアでもそう…」 「うおォォォォォオオオッ!」 シュトロハイムの脚が崩れる。 鉄でできていた二つの義足は水銀に錬金されていた。 「なんだかわからないけど…あのフーケの人形は囮だったのね…ミス・ロングビル、気をつけて…」 錬金の射程距離は長くは無い以上、その辺りに潜んでいると考える。 その時! 杖を持ったフーケが飛び出してくる。 とっさにファイヤーボールを放つが、それは土人形であった。 後ろから石礫が飛んでくる。 「その程度のちゃちな細工じゃ『微熱のキュルケ』は止められないわよッ!」 あらかじめ攻撃が来ることは予測していたため、さっと身を避けようとする。 しかし、それをミス・ロングビルが後ろから羽交い絞めにして抑えつける。 「あ、貴方も土人形だった…」 キュルケは正面から石礫を受け、嗚咽を漏らす。 羽交い絞めにされたままのキュルケは暴れる。 「は、放しなさいよッ!」 「嫌よ、だって貴方を食べちゃいたいから…」 ロングビルの土人形は歯を立てる。 しかし、ロングビルの胴体が粉々になる。 「はあ…はあ…錬金なんて慣れないもの使わせないでよ…とっとと出てきなさいよ…」 フラフラで杖を構えるのすらおぼつかない。 しかし、表情を変え、気丈であろうとし、杖を構える。 「出てこないなら…炙り出すだけよッ!」 杖を構え森に火を放つ。 乾いていた木はあっという間に燃え上がる。 「ぬう、貴様なにをしているゥウウウウッ!正気か貴様ァアアアアッ!」 上半身だけの男が叫ぶ。 「見てのとおりよ、森に火をつけて本体をあぶりだすのよッ!森中燃やせばいくらなんでも出てくるでしょうッ!」 森から煙が立ち昇る。 その煙の中からのそり、と杖を構えフードを被った女が出てくる。 「森中に…火つけなくて済んだわね……この距離なら、その怪しい土人形も、ゴーレムも関係ないわ…」 杖を構え、ルーンを唱える。 「食らいなさい!私の『ファイアーボール』ッ!」 しかし、その炎弾はフーケの手前で弾かれる。 「なにがこの距離ならだって?」 薄緑色の魔人のような人形が姿を現す。 「願い事を言えッ!」 「な、なによこれ…」 「俺の名はジャッジメント…この『土くれのフーケ』の使い魔かなにかだと思ってもらえればいい… 私は立ち向かうもの…スタンドと呼んでいる」 「こ、来ないでッ!」 「いいだろう、だが願い事は今日は2つまでだ。主の機嫌がお前のせいで悪いのだからな…Hail 2 U!」 タバサとルイズの土人形ができる。 「キュルケ」 「キュルケ」 二人が迫ってくる。 「ひッ!や、やめて…」 キュルケは杖を構え、たじろぐ。 「逃げないで」 「キュルケ、いくら仲悪いからって言っても魔法なんか私に放たないわよね?」 二つの土人形がキュルケに迫る。 「やめてえええッ!」 キュルケが悲鳴をあげる。 が、それはフーケの石礫の直撃を受け、遮られる。 「やれやれ、かなり手間取っちゃったね」 フーケは上半身だけの男を見据える。 「貴様ッ!この体を戻しやがれェエエエッ!」 「あら、まだ喋れたの?なかなか不死身ね。あなたのその胴体だけはかなり強力な『固定化』がかかっているみたいだし… やっぱり近づくのは危ないわね……じゃあ、私のゴーレムの拳で潰されてもらおうかしら、破壊の杖の使い方なら聞き出したしね」 巨大なゴーレムが近づき、フーケがその肩に乗る。 そして、数歩近づき、ゴーレムの拳を振り下ろす準備ができる。 「覚悟はいいかしら?辞世の句があるなら聞いてあげてもよろしくてよ?」 「土くれのフーケ………ヨーロッパの格言にこんなのがある。『カップを唇まで近づけても、こぼすことはよくある』」 小屋の前に少女と少年が立っていた。 「やれやれ、遅いぞ若きヒーローども、脚さえあれば俺一人でもやれたと思うがなァアアアッ!」 「あんた達はッ!?死んでいたはずッ!」 「運が悪かったわね、私たちがワムウの主人と決闘の相手で」 「彼が本気で殴ってきたら気を失わないなんてことありえないからね、少なくとも殴る軌道が僕にも見えたしね」 ルイズとギーシュが立っていた。 「なぜ!心音は服の中になにか挟むなりしていくらでも誤魔化せるとは思うけれど、脈が止まっていたのは…」 「転がっていた石ころをわきの下にはさんで動脈を圧迫すると手首の脈が止まるのよ、まさかここまで綺麗に決まるとは 思わなかったけれどね、ミス・ロングビル」 「僕も青銅の板を錬金してわきに石を挟めなんていわれたとき何をするかわからなかったよ。もっとも、死んだと思って声をかけたのは うかつだったね、土くれのフーケ」 正体がバレたとはいえ、フーケは表情を崩さない。 「あら、そんなこと言っていいの?隠れていれば生きて帰れたかもしれないのに…口封じしなきゃいけないわね!」 フーケはゴーレムの上から杖を構える。 二人もゴーレムに向けて杖を構える。 「ギーシュ、私の言った作戦は覚えてるわよね!ゼロとドットじゃまともにやっちゃ勝てないんだからね!」 「わかってるさッ!僕だってこんなところで死ねないよ!」 ギーシュが杖を振り、叫ぶ。 「ワルキューレッ!」 To be contined...
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ある日、何者かに『矢』で射抜かれ、その身に発現した超能力、『スタンド』! 一体誰が?何のために?まともな感覚を持っているなら疑問は次から次へと湧いてくるはずだが、彼―――間田敏和の心中は、『この不思議な能力をどうやって有効活用するか?』という考えで満たされていたッ! せっかく普通の人間には無い能力を手に入れたのだ。他の奴らよりもっと楽しく自由に、実りのある人生を送りたいではないか! そう思った彼は、さっそく自らのスタンド―――『サーフィス』で片思いだった順子をコピーし、好き放題してやろうと自室へ連れ込んだのであるが・・・・・。 バッチィィ―――z___ン! 今まで思い描いてきたあんなことやこんなことを実現できるという喜びに、すっかり緩んでいた間田の顔面を襲ったのは、他でもない、サーフィス順子が放った平手打ちだった!そのあまりの威力に間田は吹っ飛ばされ、部屋の隅に無様な格好で転がる。 そんな間田に、今度はサーフィス順子の怒鳴り声が襲い掛かる。 「間田君っ!貴方ねえ・・・どんなことしてるか、わかってるの!?」 「は、えっ?」 突然のことに、ブン殴られた頬を押さえ、涙目になりながら返事を返すことしかできない間田。サーフィス順子は容赦なく、彼に罵声の数々を浴びせる。 「女の子を無理やり部屋に連れ込んで、こんな仕打ち・・・・貴方は男として最低よッ!」 「前から思ってたけど、こんなに陰険で卑怯な手段を使うなんて・・・・・何で貴方は、そんな手段を使おうとしかしないのッ!?」 「気に入らないことはすぐに暴力や卑怯な手を使って解決しようとして・・・!そんなの、人間としてクズだわ!」 「知ってるのよ!貴方が授業中にキン○マいじってるの!学校まできて何キモいことやってんのよ!!」 「大体その髪型はなんなワケ!?頭にエチゼンクラゲ乗っけてるみたいじゃない!カッコイイとでも思ってんの!?」 「貴方みたいなヤツを人間として認められるわけないわ!貴方はカスよ!ゴミ以下よ、ゴミ!」 「ううッ!・・・グググ・・・・クキィーッ!!」 スタープラチナのラッシュもビックリなほど、隙無く連打される言葉というパンチの応酬! あまりの悔しさに――――予想以上に自分が順子に嫌われているというショックもでかかったが――――間田は、その場に卒倒してしまったのである! 数時間後。 気絶から覚めた間田は、サーフィス順子から浴びせられた言葉を反芻していた。 サーフィスがコピーした偽者とはいえ、このスタンドは相手の外見、性格、記憶まで完全にコピーする。たとえ偽者とはいえ、 あれらの言葉は常日頃、順子が彼に対して思っていたことなのだ。 後半はほとんどただの罵倒だったが・・・・・・大きな目を潤ませ、彼女が浴びせた言葉には、間田自身も心当たりがあった。 些細なことで喧嘩をした友人に、一生心に残ってしまうような傷を与えてしまったこともある。 気に入らない相手に陰湿な手段を使って攻撃したこともある。 ――――考えてみれば、俺の今までの人生は、『卑怯』という2文字に塗りつぶされていた。 間田は考える。なぜ自分は、音石明に協力して承太郎を町から追い出そうとし、最後には殺そうとまでしたのだろうか。 承太郎が気に入らなかったから?己のスタンドを誇示したかったから? いや、違う。 『音石明が怖かったから』・・・・ただそれだけのことだ。電撃をまとい、電気の存在するあらゆる場所に現れる彼のスタンド『レッド・ホット・チリペッパー』は、 小心者の間田に恐怖心を植え付けるには充分すぎる力を持っていた。 間田は音石明に従った。それこそ、不良に媚びへつらう使い走りのごとく。彼の命令どおり、何の関係も無かった1年生の仗助と康一に危害を加え、承太郎を抹殺しようとした。 もっとも、その命令は失敗に終わり、サーフィスは破壊され、間田は自分が痛めつけた一般人の男2人にコテンパンにやられてしまったのであるが・・・。 間田は考える。『生き方を変えよう』と。 『改心した』などと白々しいことをいうつもりは無い。自分はサーフィスの能力を悪用し、多くの人を傷つけてきたのだから。 だが、彼はどうしても変えたかった。いや、『変わりたかった』のだ。 卑怯で陰険で・・・・小心者だった過去の自分にオサラバし――――優しくて、タフで、頼りになる男に。 うわっ面の使い魔 「ったく、せっかく決意したってのに・・・・このままじゃ張り合いがねーよなぁ」 学生服を着込んだ男が不満げに呟きながら道を歩いていた。 だらしなく伸びた黒髪に、痩せた体。俗に言う『オタク』という人種の外見だった。 彼の名は間田敏和。ぶどうヶ丘高校に通う3年生である。 『優しくて、タフで、頼りになる男』になろうと決めてから早一ヶ月。結論から言うと、彼は全然変わっていなかった。 単に自分の努力が足らないだけとも言えるのだが、間田は何故か周囲のせいにしていた。 「なんつーかなぁ・・・冒険が足りねーんだよ、冒険が」 曰く、炎髪灼眼のツンデレ美少女と共に紅世の徒と戦ってみたいだの、死神代行になって開放とかしてみたいだの。 そんなことで自分が変われると思っている時点で彼は立派な中二病なのだが、平和になった杜王町にそんな冒険の気配はナッシングだった。 「吉良吉影みたいなのがまた来てくれれば、なんて言わねえけどよぉ~。血湧き肉踊るような戦いの日々に身を委ねてみたいぜ・・・ん?」 そう言いながら、彼は一軒の書店の前で足を止めた。 「おっと、いけねー。今日は『キラ☆スタ』の発売日だったんだ。買ってくか」 愛読書の最新巻が発売されることを思い出し、進路を変えた直後。 突如、眼前に光り輝く鏡のようなものが現れ、猛スピードでこちらに迫ってきたのだ! 「な・・・何だよこりゃあ!う、うわぁーッ!!」 鏡はあっという間に間田の身体を飲み込み、徐々に小さくなり・・・消えていく。 ―――スタンド使い、間田敏和。彼の冒険はここから始まる―――。
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前ページ/ゼロの使い/次ページ 瓦礫一つ、動くもの一つ無い、ニューカッスル城跡地に三体の鉄像が立ち尽くしていた。 しばらくすると、鉄像が徐々に元の姿に戻っていった。 「驚きましたね。」 「ああ、まさかワルドが自爆するとは・・・」 「そうじゃなくて、あれほどの大爆発の中で生き残った事に驚いたんですよ。」 あの時、マホカンタでは間に合わぬと判断したメディルが鋼鉄変化呪文・アストロンを唱えたお陰だった。 後、0.1秒判断が遅ければマホカンタを使用しているメディルはともかく、他の二人は城の者と運命を共にしたであろう。 「あれは自爆ではない・・・恐らく何者かに爆破させられたのだろう。」 「では、ワルドの他に文と私の命を狙う刺客がいたと?」 「そう考えるのが妥当だろう。傭兵や山賊の一件と言い、奴一人で全てをやったとは思えぬ。」 「とにかく、ここを離れましょう。その刺客が確認に来るかもしれません。」 「さっきも言ったが、僕はここで死ぬ。だから君たちは・・・」 ウェールズは台詞を言い終わることができなかった。 背後から突き出された槍に、心臓を貫かれ、断末魔すらあげる事の出来ぬまま即死したからだ。 「念の為来てみれば・・・道連れにすら出来ぬとは、つくづく役に立たぬ男だ・・・」 槍の主が、得物を死体から引き抜く。そいつは傭兵と山賊を雇ったあの髑髏の騎乗兵だった。 すかさず、メディルが五指爆炎弾を見舞うが、華麗な槍捌きによって、全て弾かれた。 「いきなり、メラゾーマ5発とは随分な挨拶じゃないか。」 「貴様が、もう一人の刺客か。」 「いかにも。呪いのかかった金貨で傭兵と山賊をけしかけたのはこの私だ。」 「よくも、皇太子を・・・!!」 ルイズが失敗魔法を放とうとするのを、メディルが制す。 「止せ。お前の適う相手ではない。」 メディルは無意識のうちに悟った。間違いなくこいつはワルドより格上。 1体1ならともかく、主を守りながら勝てるかどうかは五分五分だった。 「そうそう。私はたださっき吹っ飛んだ役立たずの尻拭いに来ただけなんだ。そしてそれはもう済んだ。 私が君たちと戦う理由は無い。」 「文はどうする?」 「さっき、上層部から連絡があってねぇ。もう文は要らぬと仰りだ。」 「ほう。」 「まあ、私自身が戦う理由は無い・・・だけだがね。」 言われて、メディルはようやく気づいた。いつの間にか周囲が紫色の霧に覆われ、そこから骸の兵士や 中身の無い血まみれの甲冑の群れが這い出してきていることに。 「我が名は死神君主・グレートライドン。冥土の土産に、覚えておいてくれたまえ・・・」 それだけ言い残して、グレートライドンの姿は消えた。 「どうするメディル?」 「この霧、恐らくこの近くで冥界の入り口が開いたのだろう。」 「それって・・・」 「恐らくこの亡者どもは無限に湧いて出るはず。相手にするだけ無駄だ。」 「じゃあ・・・」 「答えは一つ。ルーラ!」 しかし、不思議な力でかき消された。 「やはりそう甘くは無いか。・・・なんてな。」 メディルは手近な魔物にマホカンタをかけた。 「ルイズ、皇太子の死体と私の服の裾を掴め、早く!!」 「わ、わかった。」 言われるがままにするルイズ。 「生憎、着地がうまく行くかどうかは運次第だ。バシルーラ!!」 先程の魔物にかけたバシルーラが、跳ね返ってくる。 その結果、三人はニューカッスル城跡を脱出することに成功したのだが。 「この後はどうするの!!?」 「柔らかい場所か、海上か、その辺飛んでる船の上に落ちることを祈るしかない。ルーラはまだ発動できないんだ。」 「いやあああああああああああ!!!」ルイズの絶叫がアルビオン領空に木霊した。 ルイズ達が一生に一度しかしないであろう、スカイダイビングをしている頃、 アルビオン大陸軍港施設・ロサイスの一室に司祭姿の細い男が玉座に座っていた。 「閣下。」 馬に乗った死神君主が、その男の元へやってきた。 「君か。皇太子はどうした。」 「心臓を一突きに。他2名は取り逃がしましたが・・・」 「冥府の入り口まで開いておきながら・・・か?」 「あのメディルと言う男・・・かなりの切れ者のようで・・・」 「そうか。それにしても、子爵で作った花火は美しかったな。遠くからでも良く見えたよ。」 「皇太子一人吹き飛ばせない、完全な娯楽専用の花火でしたがね。」 「まあ、あれだけ綺麗ならあのお方も満足なさるだろう。それより・・・」 「分かっております。その準備を兼ねて、この世とあの世を繋げたのですから。」 「楽しみだな。トリステインが血と炎に染まる日が。」 「全く持ってその通りで。制圧の暁には閣下はまず何をなさるおつもりで?」 「・・・トリステインにはそれは美しい姫がいるという。ぜひ一度食したいと思っていたのだ。」 「相変わらずですね。百人もの美女を食べておきながら・・・」 ルイズ達は幸運にも、トリステイン国近海に不時着(落下直前、メディルが硬化呪文スクルトを連発し衝撃を和らげた)した。 彼曰く、岩場などの硬い場所ではアストロンを使う予定だったとの事。 事ここに至って、ようやくルーラが使用可能となり、ルイズ達は海水と海藻にまみれたまま、 死体を引っさげて姫に謁見と言う、トリステイン始まって以来の暴挙を成し遂げた。 死体を見せ、事の仔細を説明すると、姫は壊れたかのように号泣し、天もまた、惜しみない涙を流した。 1時間ほど泣いただろうか。ようやく涙の収まったアンリエッタが言った。 「ごめんなさい・・・つい取り乱してしまって・・・手紙奪還の件、有難うございます。 褒美にそなたが望むがままの地位を与えましょう。皇太子の遺体はわが国で手厚く葬ることに・・・」 「とんでもない。私はただ、友人の頼みを聞いたに過ぎません。」 「僭越ながら、姫様に申し上げたい義がございます。」 「何でしょう。」 「姫様はゲルマニアに嫁ぐべきではありません。」 「何故ですか?」 「最愛の男が目の前にいるのに、何故ですか?はないんじゃないか、アンリエッタ。」 ルイズとアンリエッタ、メディル以外は聞き覚えの無い声に、その場にいる者は皆振り向き、目を見開いた。 確かに死んだはずのウェールズ皇太子が立って喋れば誰でもそうしたであろう。 「どどど、どういう事!!?」 「どうもこうも無い。私の魔法で生き返らせたのだ。」 「だって、あれは・・・」 「一部を除き人は無理。確かに私はそう言った。しかし、幸運にもウェールズはその一部だったのだ。」 「一部の人間ってどういう定義で決まるの?」 「黄泉の国から舞い戻るほどの強い意志、または神や精霊などの何らかの助力。 どちらかを持ち合わせた者のみは蘇生が可能だ。」 「でも、いつの間に・・・もっと早く復活させたって・・・」 「愛しの姫の前に来れば、皇太子の死の淵から生還しようとする意志は強くなるだろうし、 敵には皇太子が死んだと思ってもらったほうが好都合だ。 そう判断し、王室へ戻り次第蘇生を行うはずだったのだが、姫が泣き出したお陰で、 タイミングを逃し、30分待っても泣き止む気配が無いので、復活させたが、 皆姫に気を取られていて気が付かなかった。で、今ここに至るわけだ。」 「ミスタ・メディル、その術で、我が王党派の者達の復活を依頼したいのだが・・・」 「残念だがそれは無理だ。あの爆発で全員、跡形も無く消滅してしまったし。時間も経ちすぎた。 灰や消し炭となった者、死後一時間以上経った人間はいかに私とて救えない。前述の助力を持つ者は時間に関係なく死体と意志さえあれば蘇生出来るが、 残念ながら、あの城の者達にそういう物は感じられなかった。 あの城の者達の毛髪でも肉片でもいいから、死体の一部があれば姫が泣き止む前に蘇生出来たかもしれぬのだが・・・」 「そうか・・・やはり叶わぬ願いだったか・・・」 「でも、良かったですね。姫様。」 「ええ・・・でも・・・」 「なりませぬぞ、姫!」 突如口を挟んだのは民から鳥の骨と呼ばれているマザリーニ枢機卿であった。 「一通の手紙でさえ、危うく国を危機に貶める所だったのに、事もあろうに・・・」 「この場の全員が口を閉ざし、皇太子は外部から見えぬ所で・・・ たとえば地下牢や隠し部屋で生活していただく。これならばどうと言うことはあるまい。」 「ききき、貴様。一国の姫に、不倫しろとでも言うつもりか!!?」 「敵から身を隠すためとはいえ、地下牢は勘弁してもらいたいな。」 「不倫しろといった覚えは無いし、さほど長い時間隠れていろという訳でもない。」 「どういう事?」 「間もなく、レコン・キスタが攻め込んでくるだろう。そもそも政略結婚の発端は奴らを倒すため、 同盟を結ぶしかなかったから。逆に言えば、奴らを倒せば晴れて堂々と結婚できると言うわけだ。」 「そんな簡単に倒せるわけが・・・」 「私なら倒せる。否、倒して見せる。」 「枢機卿殿、彼は緻密な策を用い、ワルド子爵を死闘の末、打ち負かしたのです。」 「他にも城一つ吹き飛ばす爆発から守る術を使ったり、凄まじい嵐を吹き飛ばしたり・・・ 正に彼の実力は桁外れです。国一つと戦わせても決して引けをとらぬはずです。」 「マザリーニ。私からも頼みます。私の友人とその使い魔を信じてやってはくれませぬか?」 使い魔、公爵の娘、皇太子、そして主君の眼差しに流石の枢機卿も折れた。 「では即刻、軍議に移るとしましょう。」とウェールズが切り出す。 「そうですな。敵の兵力は?」とマザリーニ。 「少なくとも5万。しかし、トリステイン侵攻の際はさらに多くの兵を率いてくるでしょう。」 「我が国の兵では太刀打ちできぬ。メディル殿に頼るしかないか・・・」 「ルイズ、ミスタ・メディル。ちょっと・・・」 二人は君主に言われるがままに、一冊の書の前に来た。 「これは始祖の祈祷書。指輪を嵌めた特定の者のみ、読めると言われています。メディル、あなたのルーンは始祖ブリミルの使い魔の物。 すなわちルイズ、あなたは始祖の使い魔の後継者を呼び出したと言えるのです。」 「なるほど。そのルイズならその書を読めるかも知れぬと。」 「はい。ミスタ・メディルの力を疑うわけではありませんが、保険は多いに越したことはありません。 あわよくば、この書にはこの戦を左右することが記されているかもしれないのです。」 「わかりました。」 返事と共に、書を手に取り、ゆっくりと読み上げるルイズ。その手には水のルビーが嵌められていた。 現段階で祈祷書から得られた情報はルイズが失われた虚無の使い手であり、彼女の爆発は失敗ではなく 虚無の初歩の術・爆発によるものであったこと。 そしてルイズは初歩の魔法『爆発』を覚えた。 「それはさておき、この度女王陛下のお耳に入れておきたいことが。」 「何ですか?」 「実は―」 「何と、そのような。」 「従わぬようなら国家反逆罪で処刑すればいいでしょう。」 「しかし、それは・・・」 「私も黙ってやるつもりでしたが、姫様の仰った通り、準備は多いに越したことはありません。」 「・・・分かりました。後ほど部隊を派遣します。」 「さて、これでお前と私はこの国の命運を左右する存在となったわけだ。」 「そんな・・・」事の重大さに、流石のルイズも腰が引けているようだ。 「人間とは死ぬ気になれば、誰かの為ならば、我ら魔族にも勝ることがある・・・認めたくは無いがな・・・」 その時ルイズは、使い魔の仮面の中に切なげな表情を見た気がした。 「ごめんなさい・・・」 「・・・謝る事は無い。お前が魔王様を殺したわけではないし、そもそも先に手を出したのは我らだ。 予想外の結果に終わったとは言え、戦と言うものの真理だと割り切っている。」 以前の自分では到底考えられぬ言葉に、彼は少しだけ自分の変化を自覚した。 ―ここへ来てまだ、数日しか経っていないと言うのに、随分といろんな目にあい、丸くなったものだ。我ながら。 前ページ/ゼロの使い/次ページ